経堂ハートファミリー

今日はなぜかどうしても下高井戸の鯛焼きを食べたくなったので早足で駅に向かった。お店が閉まるのは19:00だったのでもう間に合わないと悟り、京王線には乗らず小田急線沿いの鯛焼き屋さんに行くことにした。調べると経堂に小倉庵の本店があったので、久しぶりに経堂に住んでる友達に「一緒に鯛焼きを食べよう」と連絡した。秒で既読。間に合うか心配だったので、「わたしが間に合わなかったら先に買っておいて!ついでにカラオケのカードも返して!」とお願いした。我ながらなんて勝手なんだろう。15分後に駅に着き、走った。明らかに鯛焼き屋さんが似合わない出立ちの黒づくめに長身の人間がいたのですぐにわかった。「日替わりの味がありますけど、どうします?」と言われ、わたしは固まった。あんこ以外の選択肢がなかったからだ。というのも、下高井戸のたつみやのメニューはあんこの鯛焼きのみだからだ。友達が「今日はチョコカスタードですよ」と言うので困った。わたしはチョコもカスタードも大好きだからだ。両方食べたい。結局悩んで、両方頼んで半分こすることにした。でも日替わり鯛焼きは売り切れてて、カスタードとあんこにした。悩んだ時間を返せよ。たい焼きは基本テイクアウトが前提だと思っていたが、この店舗は中で食べられるらしい。麦茶も出してくれる。パリパリの鯛焼きに齧り付き、大学を2年留年してる友達に「最近どう?」と聞いたら、「大学辞めることにしました」と言われ驚いた。親しい人を集めて退学式をしたらしい。初めて聞いた。わたしも退学式してみたい。友達は後輩から退学祝いに高いウイスキーをもらったけど、よく見たらウイスキーではなくてコニャックで、更にコルクを抜くのに失敗してボロボロになって木屑が中に入ってしまったので一生懸命濾過して、結局ジムビームの瓶に移し替えたことを「ユニクロ着てるお金持ちみたいだ」と言っていてよかった。

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お店を出た後、煙草を吸う友達の横でアル中女の肖像のあるシーンを思い出していた。カフェでコニャックを延々と飲む。店員を呼ぶ。2つのグラスで運ばれてくる。一気に飲み干す。店員を呼ぶ。その繰り返し。バーでも居酒屋でもなく、カフェでお酒を飲むのがいいなと思った。わたしは最近、そんなお店があったらいいのになあと考えていたら、新宿のベルクがその概念に近いかもなと思った。ベルクはお店の半分が1人席なので1人でお酒を飲むには最適な場所である。ビールやワインやコーヒーなんでもあるが、ご飯が美味しい。前にジャーマンポテトサラダを注文したら売り切れていたので先週友達と行った時に初めて注文した。母方の祖母が作るポテトサラダと同じ味がして驚いた。マッシュされていない、茹でたじゃがいもが丸ごと乗っているサラダ。美味しかったので家でも再現した。

「じゃ、鯛焼き食べたし帰るね」と言ったら「えっ 帰るんですか」と言われたので少し歩くことにした。「前に送ったハートファミリーの石像、まだあるんですよ」と言われ、農大通り商店街に向かった。

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このハートファミリーの解説は「私」がしている。「私(農大 夢子)」だ。夢子は自分について全く語らないが、口調と家族の紹介の仕方でどんな人物か想像できる(そもそも人間なのか?)。夢子には、駅前の本屋さんで知り合った農大を目指して浪人中の長身の彼氏がいる。私達は、農大夢子の人物像について公園で小一時間考察した。それについては録音したので、また何かの機会に。初めは烏龍茶を飲んでいたが、わたしはお茶割り、友達はマスカット味のストゼロに切り替えて人生についての話をした。帰り道腹痛に襲われたのでしゃがみ込んだら、友達が胃薬をくれた。「お酒しかないし飲めないよ」と言ったら「自分はいつも薬を処方してもらう時、『これはお酒で飲んでも問題ないか』と確認するので大丈夫です」と言われ、「なんでお酒で飲むこと前提なんだろう」と思った。舌に乗せるとラムネの味がした。

改札でお別れする時、何度振り返っても友達が手を振っている姿が見えて嬉しかった。電車に乗ってから「そういえばカラオケのカード返してもらうの忘れたな」と思った。