緑のアパート

もっと年取ってお金持ちになったら、「お金がなかった頃良く友達と多摩川で待ち合わせして100円ローソンの安い味の缶チューハイ買って終電無くなるまで話してたなあ」とか思い出すのだろうか

花火が見えるから、という理由で多摩川の近くの小さなアパートに引っ越して2年が過ぎました

「コロナが落ち着いたらね」という今では常套句の言葉で県外の友達との遊びを断り続けて2年が過ぎました

打ち上げ花火を見ないまま夏が終わりアパートの更新月まで半年を切りました

私は何の為にこの街に引っ越して、小さな部屋のまな板を置くスペースもない小さなキッチンを工夫して調理器具を引っ掛けられるように試行錯誤しておつまみを作りお酒を飲み、働き、暮らしたのでしょうか

引っ越した日に食べたアボカドの種をなんとなくガラスのコップに生けて毎日水を取り替えて春になり芽が出て、夏になり葉が生えて、秋になり根が伸びて、冬が来て葉が落ちて、生きる気力がなくなって1年が経ちました

気配が欲しいから、という理由で買ったモンステラも鬱が戻って枯れました

全部元に戻っただけでした

でもそれは本当に元通りなんて思いますか?そんなことないね 色んなことがあったよ この一人暮らしももう終わります さよなら 川が近くの、小さな街の、小さな緑のアパート ありがとう アボカドとモンステラ