新宿三丁目のサラッケ

f:id:a_______oeoeo:20230902054903j:image

仕事終わり。友達(Mちゃん)と新宿で待ち合わせて、恋人の誕生日プレゼントを選ぶのに付き合ってもらった。だんだん自分の分も欲しくなってきて、「私たちでお揃いにするか!」という話になって面白かった。なんとなくまだ帰りたくなくて、ご飯を一緒に食べることにした。この子は、わたしと周波数が似ている。たまたま同じような格好をしていたので「シミラールックだね」と言われた。誰かと服装がかぶると嫌な気持ちになるけど、なぜか不思議と嫌な気がしなかった。信号待ちで頭を撫でられたので撫で返した。「猫っ毛だね」と言ったら、「サラサラしてるからサラッ毛だね」と言われた。「サラッケ」という響きが、韓国語みたいで妙に可笑しくてふたりで笑った。友達が行きたかったお店は混んでいたので、表面張力が働くほど並々注がれるワインが名物のアジアンバルに連れて行った。このお店は新宿御苑に近く、無職の頃に友達(Iくん)が連れて行ってくれた思い出がある。この友達がわたしと同じ病気だということを知ったのは、わたしが転院することになって、同じメンタルクリニックを紹介してくれた時だった。友達はメンタルクリニックの帰りに、このアジアンバルのテラス席で並々に注がれたワインを飲んでいたらしい。わたしは新宿三丁目世界堂に行った帰り、買ったばかりの画材を試す為に新宿御苑でスケッチをすることが多かった。結局この病院に転院した時、いつも飲んでいる薬を取り扱っていないということで、話は無くなったけど、新宿御苑に行くたびにこの友達のことを思い出す。躁転してバスタ新宿のバスに乗って何度も失踪した経験があるので、わたしは新宿という土地に苦手意識がある。どこにも行けないのに、どこにでも行けてしまう。

夏はモヒートを飲みたいけど、このお店ではキンキンに冷えた白ワインを飲むしか選択肢はないのだ。もちろんヤムウンセンと一緒に。いろんなことを話した。友達はパクチーが苦手で、わたしも苦手だった。でもヤムウンセンはパクチーが入っている。パクチーは苦手だけどそれも含めてヤムウンセンだなと思う。苦手と好きは両立する。酔うと柴田聡子を歌いたくなると言ったら、「私も好きだよ」と言われた。11月にある柴田聡子のライブの抽選に応募したから、別で予約して一緒に行こうよと誘った。「両方当たって、席が離れてたら面白いね」と言ったら笑ってくれた。昼間は『カープファンの子』の歌詞についてずっと考えていた。

f:id:a_______oeoeo:20230902052850j:image

柴田聡子は、いじわる。「意地悪」ではなくて「いじわる」。卑屈で心が狭い自分を受け入れることってなかなかできない。アルバムのジャケットも垢抜けてなくて冴えない表情をドアップにしているところもすごい。むしろ武器にしてるんじゃないかとさえ思う。そういうところが好きで、敵わないなあと思う。なのに可愛くて意味わかんない。わたしもそうなりたい。

お店を出て柴田聡子の『結婚しました』を歌いながら歩いていた。熱い頬に触れる風と鈴虫の鳴き声が気持ちよかった。秋だと思った。カラオケに行こうという話をしてたなあ、と思い出したのでカラオケに行く約束をした。3曲目を歌い終わる途中、3丁目の路地で10人ぐらいの大人達が地面に這いつくばって何かを探していたので、声を掛けてみた。1人の女性がピアスのキャッチを失くしたらしい。そこで初めて気がついたのだけど、この人達は全員他人だった。完全に友達だと勘違いするぐらい一体感があった。「東京の人って優しいんですね」と泣きそうな顔で感謝する女性に「どちら出身なんですか?」と聞いてみたら「福岡です あっ!でもずっと東京に住んでいます」と言われて笑った。じゃああなたも東京の人じゃん。結局探しものは見つからなかったけど、この状況が面白くて新宿だなあと思った。「知らない人の為に地面に這いつくばってさ、なんだかんだこの状況楽しんでると思うんだよね みんな」と言ったら「非日常だもんね まるでお祭り」と言ってくれて嬉しかった。

スタバを通りかかる時、友達にもらったスタバチケットの期限が切れそうなことを思い出したので、店内に入った。期間限定のさつまいものフラペチーノを注文した。スタバには混んでいるし、甘い飲み物ばかりだから三年に一度しか行かない。今日がその一度だ。ふたりで「喉の天井が痛い」と言って飲んだ。甘い。夏と秋の狭間の為にある飲みものだと思った。

家に帰り、友達から「今から前髪切ろうかな」とLINEが来たので「深夜テンションで切ると高確率で失敗する いけ!」と言ったら「これを言ってからのいけ!ってすごい」と言われた。本当はベッドを組み立てる予定だったので、「ベッド組み立てた?」と聞かれて「手もつけてないよ」と言ったら「がんばって手くらいはつけて」と言われたので、段ボールに手をつけている写真を送った。そういうことじゃないと言われるかと思ったけど、「がんばったね」と返ってきて、やはりこの人はわたしと周波数が似ていると思った。

f:id:a_______oeoeo:20230902060623j:image